かすべとは北海道のご当地食材！カスベはエイ？唐揚げが美味しい？

皆さんは「かすべ」という食材をご存知でしょうか？

かすべとは、北海道や東北地方など北日本の食卓・飲食店で使われている食材のことです。漁獲量が極端に少ないため、他の地域ではほとんど食用されていません。いわゆるご当地グルメの一種であり、現地では非常に人気があります。

そこで今回は、かすべの特徴や食べ方、かすべを提供しているおすすめの料理店などを紹介していきます。北海道・東北方面に行く予定のある方は、ぜひ参考にしてください。

結論から言うと、かすべとは「エイ」のことです。学術的にはエイ目（もく）のガンギエイ科に属し、羽のような扁平の体と長い尾を持っています。

日本国内では「エイ」と呼ばれているものの、北海道では「かすべ」という地方名が一般的です。東北地方では「かすペ」と呼ばれることもあります。

エイにもいろいろな種類がいるように、かすべにも「水かすべ」と「真かすべ」があります。水かすべはソコガンギエイ属、真かすべはメガネカスベ属のエイのことです。一般的には、真かすべの方が分厚くて食用に適しています。

北海道で使われているエイの「かすべ」という地方名は、役立たずを意味する「カス」に由来しています。

エイの体組織には大量の尿素が蓄積されているため、死亡すると加水分解によってアンモニアが発生します。強烈な悪臭を放つエイの身は食材として扱いづらく、金にならない「かすべ」と呼ばれるようになりました。

エイのひれを乾燥させたエイヒレは比較的保存がきくため、北海道から九州まで幅広い地域で食用されています。

一方、かすべ（エイ）は、水揚げ後に十分な鮮度を保てる北海道・東北地方の日本海沿岸地域でしか食用されていません。新鮮なかすべを食べるためには、北海道への遠征が不可欠です。

ここでは、かすべを美味しく食べられる旬の時期や味の特徴などを紹介していきます。

かすべは基本的に北海道で一年中食べられますが、エイの産卵期にあたる夏場頃が最も脂の乗っている旬の時期にあたります。

しかし、エイの種類によっては冬場が旬になる場合もあり、熱燗の肴として非常に重宝されます。

かすべ（エイ）は、食べると白身魚のような味がします。あっさりしていて、癖が無いのが特徴的です。

骨は軟骨なので、骨ごと調理して食べられるメリットもあります。鮮度が落ちると強烈な臭みを発するのが難点ですが、保存・下処理をしっかりしていれば酒の肴として非常に有用です。

かすべ（エイ）には、大量のコラーゲンが含まれています。

コラーゲンはたんぱく質の一種であり、人体の皮膚・骨・内臓などを構成する必要不可欠な要素。コラーゲンが不足すると、肌荒れや骨粗鬆症など様々な老化現象が顕著になります。

コラーゲンの摂取が美容・健康につながるという明確な科学的根拠はありませんが、何もしないよりは遥かにマシです。肉体を若々しく保ちたい方にとって、コラーゲン豊富なかすべはおすすめの食材です。

かすべ（エイ）は加水分解によって大量のアンモニアを発生するため、低温保存・加熱調理が基本的な処理方法となります。

購入時には出来るだけ鮮度の良いかすべを選び、少しでも臭みを感じる場合はサッとお湯に通す「湯引き」によって水溶性のアンモニアを除去する下処理が有効です。

ここからは、かすべを使ったおすすめの料理方法・食べ方を紹介していきます。

最も一般的なかすべ料理は唐揚げです。塩・コショウ等で下味をつけ、片栗粉をまぶして油で揚げます。骨抜きも不要。揚げる時間は5～10分程度でOKです。

加熱調理すれば、かすべから大量のアンモニアが発生するのを防げます。非常に簡単で家庭でも実践できる調理法なのでおすすめです。

しかし、長時間揚げ過ぎると、かすべが焦げて不味くなります。ご注意ください。

かすべを刺身として食べる方法もあります。かすべは非常に鮮度の劣化が早いため、本来は生のまま食用するのは好ましくありません。しかし、アンモニアが発生する前に食べる刺身には、他の調理方法には無い味わいがあります。

軟骨を外したかすべを湯引きし、氷水で締めて下処理します。一口サイズに捌いたかすべを醤油に付けて食べれば、最高の酒の肴になります。

鮮度が命の食べ方なので、一般的には冬限定です。熱燗を引っかけながらかすべの刺身を食べれば、北海道の魅力を存分に堪能できることでしょう。

風通しの良い日陰等でかすべを低温熟成させたかすべの一夜干しは、北海道内でも流通量の少ない珍味です。身が残っているエイヒレを味付けした状態で販売しているため、軽く炙っただけで簡単に食べられます。

焼き上げたかすべから漂う香ばしい匂い。口の中で弾ける軟骨の食感がたまりません。入手する機会があれば、ぜひご賞味ください。

魚介類や野菜などを酢味噌で和えたものをヌタと呼びます。湯引きしたかすべをヌタにして食べると、日本人の味覚に相応しい引き締まった味になります。

作り方も比較的簡単で、生のエイに近い風味を楽しめます。季節に関係なく実践できる調理法であり、一年中かすべを食卓に並べたい方におすすめの食べ方と言えるでしょう。

煮付けは、唐揚げと並ぶかすべの定番調理方法です。醤油やみりんなどの調味料で味付けして煮込んだかすべは、おかずの一品として非常に重宝します。

温めた煮汁にかすべをじっくり浸して調理するため、他の食べ方に比べて完成までに若干時間がかかるのが難点。しかし、その分かすべ全体に濃厚な醤油の味が染みわたり、いつまでも口の中に残る旨味を堪能できる魅力があります。

かすべを鍋物にして食べる方法もおすすめです。シイタケ・ニンジン・蕪の葉などの野菜を入れ、鍋で煮込んで調味料を加えれば、多少のアンモニア臭が出ても問題なく食べられます。

寒い冬場にかすべの鍋料理を囲めば、体の芯までポカポカになることでしょう。また、ゼラチン状に固まったかすべの煮凝りをご飯に乗せれば、美味しくてコラーゲン豊富なヘルシー料理にもなります。

北海道ではスーパーマーケットなどのお店でかすべ（エイ）が売られており、自宅で調理して食卓に並べられます。

しかし、上質なかすべ料理を味わいたいなら、現地の料理店に行くのがベストです。最高鮮度のかすべを使ったメニューは、高い金を払うだけの価値がある逸品です。

ここからは、北海道でかすべ料理メニューを提供しているおすすめの料理店を紹介していきます。

旬の味処 かすべは、旭川駅から買物公園通を進んだ先にある居酒屋です。夕方から営業しており、おでん・焼魚・味噌汁など体の温まるメニューを提供しています。

おいしいかすべ料理にも定評があり、煮凝り・ヌタ・唐揚げ・味噌漬け・干かすべを700円、冬季限定の刺身を1,000円でオーダー可能。リーズナブルな料金で北海道の郷土料理を楽しめます。

味百仙は、札幌駅のすぐ近くにある居酒屋です。地酒を飲みながら、鮮度抜群の海産物を酒の肴として楽しめます。中でも、美味しんぼという漫画に登場したジャガイモのバター煮が人気メニューです。

醤油でじっくり煮込んだかすべの煮付けは、お酒との相性抜群。日本酒好きな方は、北海道への出張・観光旅行の際に是非お立ち寄りください。

北海道料理かすべは、小樽駅から南に10分ほど歩いたところにある居酒屋です。ウッドテイストの広がる古風な雰囲気の当店は、あの昭和のトップスター・石原裕次郎氏のお気に入りだったことでも有名です。

にしんやほっけなど、北海道産の海産物メニューが充実。干しかすべや煮凝りなどのかすべ料理も、700円程度の良心的な料金で提供されています。

初めて訪れた方でも不思議な懐かしさを感じるレトロな空間。昭和の時代にタイムスリップしたような安らぎを感じられます。

きた鳥は、網走駅から東に向かった先にある居酒屋です。オホーツク海に近く、鮮度抜群の食材を使った刺身・焼物メニューを豊富に提供しています。

かすべの一夜干しを500円程度の料金でオーダー可能。海風で熟成させたかすべは、酒盛りにピッタリの料理です。深夜過ぎまで営業しており、北の大地で徹底的に盛り上がりたい方におすすめです。

かすべ（エイ）は劣化しやすい上に水揚げ量自体が少ないため、北海道・東北地方以外のエリアではほとんど店頭で見かけません。

しかし、インターネットが普及している現代では、現地まで行かなくても通販でかすべを注文可能。200～300gあたり1,000～2,000円前後の価格で販売されています。

産地直送の商品なので、オーダーから発送まで多少時間がかかるのが難点。とはいえ、なかなか北海道まで行く機会のない方にとって非常に重宝するサービスであることに変わりはないでしょう。

なお、かすべを通販で購入する際には、配達日時を指定して出来るだけ早く確実に受け取るようにしましょう。

生もののかすべは、日が経つと劣化して味が落ちてしまいます。万一開封時に腐臭を感じた場合は、湯引きなどの下処理を行ってから調理してください。

今回は、北海道のご当地食材・かすべの特徴や食べ方、かすべを注文できるおすすめの居酒屋などを紹介いたしました。

北海道にはカニやイクラなど様々な海の幸がありますが、希少性の高いかすべ（エイ）は知る人ぞ知る隠れたグルメです。遠方に住んでいる方にとっては、良い旅の思い出になることでしょう。

北海道に出かける予定のある方は、ぜひ本記事を参考にして現地でかすべ料理を食べてみてください。