カザフスタンの治安は危険?安全?アスタナなど観光や旅行での注意点も解説
カザフスタンには治安の悪いイメージがあるかもしれません。近年、テロや有名アスリートの刺殺事件も起こりました。ですが、中央アジアで最も豊かなこの国は、治安に注意さえすれば十分観光を楽しめる所です。そこで、ここではカザフスタンを安全に堪能するポイントをまとめます。
目次
カザフスタンは安全?旅行前に知っておきたい治安状況
カザフスタンは中央アジア最大にして最も豊かで美しい国です。ですが、経済格差が大きく、そのために窃盗などの犯罪は決して少なくありません。
海外の中では極めて危険な治安の悪い地域というわけではありませんが、旅行注意を怠ってはいけません。
近年のカザフスタンで起こった大きな二つの事件
カザフスタンでは、2016年6月にアクトベでテロ事件が起こりました。武装集団が銃器店を襲撃、また軍事基地への襲撃も試み、民間人四人、兵士三人が犠牲になりました。
この事件以後、カザフスタン国内ではテロへの警戒が厳しく行われているようです。
また、2018年には、ソチオリンピックで銅メダルに輝き「カザフスタンの英雄」とも呼ばれたフィギュアスケート選手、デニス・テンさんが刺殺される事件も起こっています。
カザフスタン最大の都市アルマトイで、犯人の二人組が、売却目的で車のミラーを盗もうとしたところ、所有者であるテンさんが現れて口論となり、二人はテンさんの太ももを刺し逃走したといいます。
犯人のうち一人は、事件の数日前、首都アスタナでも地元民の車のミラーを盗もうとして拘留されていました。
日本と海外で違うカザフスタンの治安に対する警戒レベル
2016年のテロ事件や2018年のテンさんの刺殺事件からは、カザフスタンの治安の悪さがうかがえます。
しかし、海外のカザフスタンへの警戒レベルは、意外にも日本ほど高くはありません。他国はそこまで危険視してはいないのです。
一般犯罪も日本に比べると多いと言えますが、世界的に見るとそれほどの発生率ではないのです。アクトベの件はありますが、テロでも大規模なものは過去に起こっていません。
アメリカやフランス、イギリスといった欧米の国々の方がテロの発生率は高いと言えます。
では、なぜ日本での警戒度が高いのでしょうか。それは日本では流通していない銃や薬物が広まっていることが一因です。
また、前述のテンさんが日本での人気が高く、彼の事件がメディアで大きく取り上げられたこともあるでしょう。
ですが、テンさんが刺殺されるという悲しい結果になったのは、彼が勇敢にも犯人たちに立ち向かったことが原因です。悪漢を目の前にしても、逃げずに戦うその姿勢は素晴らしいものですが、身を守ることを考えれば、こっそり通報する方が遥かに安全です。
経済格差により引き起こされる犯罪
カザフスタンは経済格差の大きな国です。そのため、困窮し、犯罪に手を染めてしまう人もいるのです。ですから、他国に比べて凶悪犯罪が多くはなくとも、窃盗には注意が必要です。
そして仮に窃盗被害にあってしまった場合は、無理に抵抗せずに警察の力を借りましょう。テンさんの事件や、日本と違ってカザフスタンには銃が流通していることを忘れてはいけません。
窃盗は次の危険に繋がっていると考えましょう。
カザフスタンはどんな国?
治安に対して油断してはいけませんが、カザフスタンは豊かで、そして美しい国でもあります。
急成長するカザフスタン
カザフスタンは世界第九位の国土面積と豊富な天然資源に恵まれた国です。
そのため、1991年に旧ソ連から独立した際はたいへん貧しかったのが、現在では中央アジアで最も豊かな国にまで成長を遂げました。
そして、1997年に遷都し、新たな首都となったのがアスタナです。そしてこの新首都こそ、どんどん成長するカザフスタンを象徴する存在と言えます。
SF映画に登場するような「近未来都市」アスタナ
アスタナは、冬にはマイナス四十度にもなるという極寒の地。冬に訪れると厳しい寒さに驚くことは間違いありません。
しかし、アスタナの街並みを目にした瞬間、観光客はそれを上回る衝撃と感動を覚えることでしょう。
そこにあるのは、SF映画で描かれるような近未来的建造物がシンメトリーに並んだ光景。空飛ぶ車が出てきそうな気さえするほどです。
この美しい「近未来都市」をプロデュースしたのは、なんと日本を代表する建築家、黒川紀章さん。1998年のアスタナ都市計画の世界コンペで一位となり、デザインしました。
ですが、竣工予定は2030年。黒川さんの思い描いた未来都市の開発は、まだまだ続きます。
しかし、開発途中の今だからこその美しさがあるのも事実です。
もともとカザフスタンは平地。広い大地、広い青空、広い川が織り成す雄大な景色が見られる国です。
そこへ、にょっきり斬新なデザインの高層ビルなどの建造物が立つ様には、過去と未来が融合したような少し不思議な雰囲気があり、たいへん魅力的な景観を呈しています。
外務省発表によるカザフスタンの危険度
魅力的な国であるとはいえ、注意は欠かせません。前述の通り日本ではカザフスタンの治安へ他国に比べて高い警戒を示しています。
それは、日本では流通していない銃器が持ち歩かれている可能性があるからです。自国、日本と同じ治安状況だと考えるのは、油断に他なりません。
そこで、ここでは外務省の発表する危険情報から、カザフスタンの警戒レベルについてみていきましょう。
危険情報とは、外務省による渡航情報の内、海外への渡航に際した安全に関する情報のことです。安全上問題があると考えられる国や地域に対して、その危険度を1〜4で表しています。
カザフスタンの危険度はレベル1。この危険度は、全体的に治安は安定してはいても、一般犯罪が多発するなど、渡航に対して特別な注意が必要な場合に発せられるものです。
ポイントは、やはり2016年のテロ。過去に日本人が巻き込まれたテロ事件はありませんが、テロはいつ、どこで起こってもおかしくないものです。
加えて、カザフスタンではインターネットを通じてテロを支援する情報宣伝活動をしたとして逮捕される者が相次いでいます。
また、一般犯罪も多く、やはり十分な注意が必要のようです。
カザフスタンで危険な場所
たくさんの人が集まる場所では、スリなどの盗難の危険は高くなります。もちろん、カザフスタンでも同じです。けれど、地域によって治安状況が全く違ってくるのがこの国。
そこで、ここでは盗難を始めとする一般犯罪の危険が高いところをご紹介します。
繁華街・バザ-ル
カザフスタンは世界第九位の国土面積を誇る国ですが、人口は1800万人程度。日本の七倍の面積がありながら、人口は日本の七分の一ほどしかいないのです。
ですから、人の集まる繁華街と言っても、私たちが想像するほど賑わってはいません。
そんなカザフスタンの中でも、中々の賑わいを見せるのがバザール。
バザール、と聞くと、炎天下の砂漠にテントが並んだ様を想像する方が多いかもしれません。
けれど、カザフスタンのバザールの多くは、屋内にあります。カザフスタンは冬の寒さがひどいため、温かな場所でゆっくり買い物をするには、屋内の方が適しているのです。
アスタナやアルマトイなどの都市にも、有名なバザールがあります。
アスタナには、ショッピングモールのようなユーラシアバザールと、市民の台所のアルチョムバザール。
アルマトイには、カザフスタンの観光地としても名高い中央バザール。
こういった場所は、もちろんたくさんの人が集まってきますが、そこまでスリなどの危険は高くありません。街の中心の方が住んでいる人が入り乱れておらず、治安が安定しているからです。
一方で、危険なのは中心部から離れたところ。街の中心から10キロ離れたアスタナ市の外れのシャンハイバザールは、注意が必要な場所のひとつ。
地元の人も「カザフスタン人でさえスリにあう」と言うほど盗難被害の多いここは、市内の人と地方から買い物に来る人が入り乱れている、つまり、集まっている人々が多様なところです。
前述の通り、貧しい層の中には生活苦のため犯罪に手を染めてしまう人が少なからずいるカザフスタンという国では、そういう場所こそ治安が安定しておらず、危険と言えます。
観光客は狙われやすいので、特に注意が必要です。
このように、同じバザールであっても、エリアによって危険の度合いが変わってきます。
街の中心部から離れたところは、いろんな人がいて治安が悪い場合が多いため、特に注意しましょう。
また、テロ対策の一環として、バザールをはじめ、人の多く集まるところでは、警察官による職務質問が行われることがあります。
外出の際は必ずパスポートを持参し、滞在先を答えられるようにしておきましょう。
住宅街
カザフスタンの住宅街は、人口密度の低さもあってか、あまり人気がなく、閑静な雰囲気です。
特に昼間などは、危険を感じない穏やかな場所という印象ですが、実は先にあげたテンさんが刺殺された現場は高級住宅街でした。繁華街にも近く、比較的治安も安定している地域です。
しかし、そういう富裕層が多い地域だからこそ、車上荒らしに狙われてしまったのでしょう。
治安の悪いところはもちろん、こうしたお金持ちの多い住宅街でも油断してはいけません。
また、カザフスタンの住宅街は街灯が少なく、夜になるとかなり暗いところも多いようです。
人気の少ない暗がりでは、当然危険も大きくなります。できるだけ夜の一人歩きは避けるようにしてください。
カザフスタンでの観光客をターゲットにした犯罪
日本人がカザフスタンを歩いていても、意外にも観光客と思われないことが多いです。カザフスタンの半数を占めるカザフ人はモンゴル系であり、日本人とよく似ているからです。
さらに韓国系や中国から帰化した人々も多く、街を歩いているだけで日本人観光客だと気づかれることは少ないのです。
ただ、治安の悪い地域では観光客と分かると何かしらの犯罪のターゲットとされやすいところもあります。そこで、ここでは観光客が狙われやすい犯罪について書いていきます。
スリ
最も被害が多いのはスリです。バザールなど人の集まるところでは観光客が狙われやすいです。前述の通り、特に街の中心部から離れた治安の悪い地域の人の集まりには、注意してください。
強盗
スリと同様、日本人観光客が強盗にあったという報告も多いです。地元民が被害にあうケースも、もちろんありますが、右も左も分からない旅行者は、より狙われやすいです。
現在、アルマトイなど南部は治安が悪化してきており、観光客を狙った強盗が増えていますので、旅行で南部地域へ行く際は特に注意してください。
ぼったくり
ぼったくりの被害もあります。無許可タクシー、いわゆる白タクは危険である可能性が高く、外国人観光客だと分かると値段は五倍、十倍となることも珍しくありません。
できるだけ公共の交通機関を使うことをお勧めします。もし他に方法がなくタクシーを使う場合は、必ずタクシーの相場を確かめてから乗るようにしてください。
偽警察官
カザフスタンは警官が多く、そのために治安が維持されている面もありますが、逆にそれを利用し、警官に扮して金品を奪う犯罪が多発しています。
職務質問を装い所持品を出させて奪ったり、難癖をつけて罰金を要求してきたりすることがあります。
ですが、実際はカザフスタンの法律では、警察官がその場で罰金を徴収することは禁じられています。そのような場面に遭遇したら日本大使館に連絡をしましょう。
カザフスタンで安全に旅行するための注意点
カザフスタンはアスタナをはじめ、美しい景色を堪能できる国です。せっかく魅力的な国へ旅行するなら、安全に楽しみたいものでしょう。そこで、ここではカザフスタンを安全に旅行するためのポイントをまとめます。
人気のない場所へは行かない
カザフスタンは日本に比べて人通りの少ない場所が多いです。そして、そういう場所では強盗目的の犯罪が多く発生しています。
比較的治安が安定している地域の住宅街も、夜には街灯が少なく人気もないので危険です。人気のない場所はできるだけ避けるようにしてください。
たくさん現金を持ち歩かない
観光客が狙われやすい原因のひとつは、旅行先でのショッピングを楽しむために、多額の現金を持ち歩いていることが多いことです。できるだけ持ち歩く現金は少なくしましょう。
また、治安の安定していない地域では、ウェストポーチなどしっかり身につけるものにしまい、服の下の隠しておくと良いでしょう。
せっかくの旅行なのにショッピングを楽しめなくなってしまうのは残念だと思われるかもしれませんが、心配いりません。
カザフスタンはカード社会。どんなに安いものでもクレジットカードで買える場合が多いです。
また、カードならば電話するだけで使用を停止できるため、現金を持ち歩くよりも断然安全と言えます。
もし現金が必要になった場合も、ATMで簡単に引き出せますので安心してください。
人の荷物を預からない
近年、カザフスタンでは麻薬犯罪が増え、治安が悪化しています。
カザフスタンはアフガニスタンなど治安の悪い国や、ロシア、中国といった大国と隣接しており、治安の悪い国から大国への麻薬密輸の経由地となっている現状があります。
そのため麻薬絡みの犯罪が増えているのです。ですから、知らない人物から中身の分からない荷物を預けられると、知らずに麻薬密輸に関わってしまう危険がなくはないのです。
近年、引き起こされているテロへの警戒も兼ねて、他人の荷物は決して預からないようにしてください。
自分の荷物から目を離さない
治安の安定していない地域では、なるべく荷物は身につけておくのが無難です。比較的安全とされているエリアでも、必ず目の届くところに置いておくようにしてください。
治安状況を把握すれば美しいカザフスタンを堪能できる
カザフスタンは近未来的景観と、広大な空や自然の不思議な調和を堪能できる、二つとない国です。
SF映画の世界に入り込んだかのような雰囲気は、日常から離れて旅行を楽しむのにうってつけであり、観光客にとってはたいへん魅力的と言えるでしょう。
けれど、日本ほど治安が安定しているわけではないカザフスタンにおいて、その魅力を充分に楽しむためには、安全に過ごすことが第一です。
治安状況をしっかりと把握し、気をつけるべきポイントをおさえることで、旅行を満喫できるはずです。