法隆寺の見どころ!五重塔や仏像など国宝建造物・彫刻や基本情報も紹介
奈良県斑鳩町の法隆寺は世界最古の木造建築です。聖徳太子ゆかりのお寺として、いまも厚い尊敬を受けており、広い境内の中には見どころがたくさんあります。 今回は、法隆寺とその周辺の見どころを、主に建物や仏像などの文化財を中心にご紹介します。
目次
奈良・法隆寺は見どころがたくさんある建造物!
奈良県生駒市斑鳩町の法隆寺は、日本で最も権威と伝統のあるお寺のひとつです。聖徳太子にもっともゆかりの深いお寺として、今でも多くの参拝者が訪れます。修学旅行で行ったことのある人もいるかもしれません。
大規模な伽藍を擁する法隆寺には、あちこちに見どころがたくさんあります。国のまほろばと呼ばれる雄大な奈良の地で、古くから続く日本の伝統的な空気に触れる旅に出かけましょう。この記事では、法隆寺に伝わる建築や仏像、そしてその周辺のおすすめスポットをご紹介します。
法隆寺はどんなお寺?
見どころの多い法隆寺は日本の仏教宗派のひとつ聖徳宗の総本山で、仏教伝来直後の日本の仏教寺院の姿を今にとどめる貴重な文化遺産です。約187000平方メートルにもおよぶ建造物群は、世界最古の木造建築群として知られている見どころです。
法隆寺の歴史
寺伝によれば、607年に聖徳太子が斑鳩の地に自らの宮を建造し、それに隣接して斑鳩寺(法隆寺)を建てたといわれています。斑鳩は当時都のあった飛鳥から、港のある河内(現在の大阪)を結ぶ重要な地点で、今よりずっと人が多く行き交う場所でした。
古くから、法隆寺の伽藍は聖徳太子の創建した当時のままの建築であると言われていましたが、1939年の発掘調査で、670年に一度火災で焼失したあと、再建されたものだということが判明しました。
しかし、それ以来実に1400年近くの間、法隆寺は一度も立て直されることのないまま、当時の姿を保っている見どころの多い寺です。
奈良の世界遺産
第二次世界大戦でも幸い大きな被害を受けなかった法隆寺は、終戦後の1950年には建造物や所蔵される文化財の一部が国宝や重要文化財に指定されており、お寺全体が日本を代表する見どころの貴重な文化財となっています。
さらに、1993年には、世界最古の木造建築群であること、古くからの信仰が息づく場所であること、また、後の時代の日本建築に多大な影響を与えたことなどから、世界文化遺産に指定されました。姫路城と同時に、当時は奈良ばかりでなく日本でも初となる、記念すべき世界遺産でした。
近くの法起寺も同じ「法隆寺地域の仏教建造物」として世界遺産に登録されました。このお寺も後ほど紹介しますので、記事の最後までお見逃しなく!
【法隆寺の見どころ①】国宝建造物6選!
見どころの法隆寺の広大な伽藍は、全部で48の建造物で構成されています。その全体が世界遺産として登録されていますが、その中でも特に18棟は、国宝にも指定されています。
今回は、その中から特におすすめの見どころ6件をご紹介します。
①五重塔(西院)
法隆寺と聞いて真っ先に思い浮かべるのがこの五重塔という方も多いのではないでしょうか。世界最古の木造建築である法隆寺の塔は、もちろん世界最古の五重塔です。
そのそも、仏教寺院では、五重塔は仏舎利(お釈迦様の骨)をおさめる神聖な場所で、寺院の中では本堂と並んで重要な場所です。こちらの法隆寺の五重塔は、1層目から5層目にかけて屋根の大きさが急激に小さくなるという点で、古い様式を今に伝える貴重な見どころの多い建築です。
見どころ内部には、こちらも国宝に指定されている粘土製の群像があり、維摩経というお経に登場する物語の場面を表しています。のちの時代には木製の仏像や掛け軸などがこのような壁面装飾を担ったので、塑像による表現は大変珍しいものなのでじっくり観察することをおすすめします。
②金堂(西院)
法隆寺の伽藍は大きく西院と東院の2つに分かれています。西院の本堂にあたるのが金堂で、深くおおらかな曲線を描く軒が美しい、飛鳥時代の寺院建築の代表的作品です。
金堂の中はかつて美しい壁画で彩られていましたが、1949年の火災でその大部分が損傷してしまいました。損傷した壁画は非公開となっていますが、難を逃れた飛天の壁画は、境内の大宝蔵院(宝物庫)で見学できるので、併せて見学するのがおすすめ。
③中門(西院)
同じく西院の中門も国宝に指定されています。お寺の門によくある仁王像ですが、ここの仁王像は日本最古のものです。
また、他のお寺と異なり、門の真ん中に柱があるのも特徴的です。
④大講堂(西院)
こちらも西院にある大講堂は、990年と他の建物よりも新しく、一度焼失した後再建されたものです。それでも1000年以上の古さなので、法隆寺の凄さがよくわかります。
こちらでも国宝の薬師三尊像などが拝観できます。
⑤回廊(西院)
回廊は一部を除いて金堂と同時期、つまり飛鳥時代そのままの形が残っていて、金堂を五重塔をぐるりと囲んでいます。法隆寺のすごさはお堂だけにとどまりません。なんと、お堂とお堂を結ぶ回廊までが国宝なんです!人の行き来が多い回廊までがこのように保存されていることに驚きです。古代の僧侶が歩いた回廊で、じっくり思いを巡らせてみるのもおすすめです。
⑥夢殿(東院)
西院の隣にある東院は、聖徳太子の住居であった斑鳩宮の跡地です。東院にある夢殿は、一説には聖徳太子がここで仏様の夢を見たとも伝えられる、東院で最も重要な建物です。
こちらに安置される救世観音菩薩像は、長年秘仏中の秘仏とされ、覆いを取ると地震が起こるとさえ言われていました。現在でも春と秋の2回のご開帳でしか拝観できない貴重なお像です。ご開帳の時期をしっかりチェックして訪問することをおすすめします。
【法隆寺の見どころ②】国宝彫刻4選!
法隆寺の魅力はお堂などの建築物だけではありません。お堂の中に安置されている仏像群も、国宝や重要文化財として、また今も続く信仰の対象として、訪れる人を惹きつけています。
法隆寺には仏像だけでも19件の国宝が保管されていますが、ここではもっとも代表的なものを4点ご紹介します。
①釈迦三尊像(金堂)
金堂の中央に安置された釈迦三尊像は、法隆寺全体の本尊として厚い尊敬を受けています。
日本で最も古い仏師(仏像制作者)として知られる鞍作止利(くらつくりのとり)の手になる作品で、背後に刻まれた銘文からは、中央の釈迦像は聖徳太子自身のお姿を写しとったものであること、聖徳太子の病気平癒を祈って作られたものの、その甲斐なく亡くなったことなどがわかります。
波のような模様を描いて垂れる美しい衣や、いわゆるアルカイック・スマイルをたたえた穏やかなお顔、アーモンド型の目などは、飛鳥時代の仏像彫刻を代表する作品です。また、同時代の中国の仏像の様式を反映している点で、世界的にも貴重な作例です。
②薬師如来像(金堂)
同じく金堂にある薬師如来坐像は、釈迦三尊像とは別の、「東の間」の本尊です。聖徳太子の父である用明天皇の病気平癒を祈願して計画されたものの、亡くなったので、その意思を継いで推古天皇と聖徳太子が完成させたと、裏側の銘文に書かれています。
ただし、制作年代は釈迦三尊像よりも新しく、670年ごろ法隆寺の再建時に作られたものだということが明らかになっています。この銘文は、最初の創建時に作られて、火災で焼失したオリジナルの仏像から写したものとも考えられています。
時代も形式もよく似た釈迦三尊像とじっくり見比べてみるのもおすすめです。
③観音菩薩像(大宝蔵院)
法隆寺の宝物館である大宝蔵院は、金堂と五重塔の北東にある建物です。ここには法隆寺の伽藍から移された仏像その他の宝物が納められています。5点の国宝と2点の重要文化財を含む重要なコレクションの中には、教科書に出てくる玉虫厨子や、白鳳時代の代表的な仏像である夢違観音などがあります。
観音像はもう1点あり、それが有名な百済観音です。百済観音は、細く縦に長い身体表現や、釈迦三尊像に比べて写実的な表現が特徴です。
和辻哲郎が『古寺巡礼』で、「形そのものの美を目ざすというよりは、形によって暗示される何か抽象的なものを目ざしている」と絶賛しているとおり、ある種の現代アートのような、超越的な雰囲気を醸し出しています。
「百済観音」という名前のために、以前は輸入された仏像だと考えられていましたが、現代では国内で作られたと考えられています。しかし、法隆寺の古い記録には存在しない、いつ作られたかはっきりしないなど、ミステリアスなお像です。
④聖徳太子象(聖霊院)
金堂と五重塔の東にある聖霊院は、聖徳太子をお祀りする建物です。比較的新しい建物ですが、それでも建築は鎌倉時代のものです。平安末期ごろから聖徳太子信仰が盛んになり、それにともなってこの建物が建てられました。
内部には3つの厨子があり、中央に聖徳太子像、左右の逗子には聖徳太子の子や兄弟、師匠である恵慈法師の像が安置されています。いずれも国宝で、中でも中央の聖徳太子像は、平安時代の貴族の装束をつけて威儀を正す、謹厳な聖徳太子を表した名作です。
普段は拝観することができず、毎年3月22日の「お会式(聖徳太子の明日の法要)」の際にのみ公開されるので、拝観したい場合は日程に注意が必要です。
法隆寺の拝観時間・料金など基本情報!
法隆寺の拝観時間は春から秋と冬季で若干の違いがあります。事前にしっかりチェックするのをおすすめします。3月22日の「お会式」や、夢殿観音が拝観できる春と秋の秘宝展など、イベントも数多くあるので、ぜひスケジュールを確認してみてください。
住所 | 〒636-0115 奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺山内1-1 |
電話番号 | 0745-75-2555 |
拝観時間 |
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拝観料金 | 一般:1500円 小学生:750円 |
駐車場の有無 | なし |
アクセス | JR法隆寺駅から徒歩約20分 または 法隆寺参道下車、約10分 |
法隆寺へのアクセス方法は?
法隆寺の最寄駅は、JR法隆寺駅です。京都方面からはJR奈良線経由で、大阪方面からはJR大和路線経由または近鉄奈良線から生駒、王寺で乗り換えてアクセスできます。
JR法隆寺駅からは、徒歩で約20分の道のりです。駅前から出る「法隆寺参道」行きのバスに乗って行くこともできます。バスの場合は、法隆寺参道で下車するまで約10分の道のりです。
JR/近鉄の王寺駅、近鉄筒井駅からもバスでアクセス可能です。
一緒に行きたい!法隆寺周辺の見どころスポット2選!
せっかく斑鳩まで来たので、法隆寺以外の見どころにも足を伸ばしてみましょう。法隆寺にゆかりのあるおすすめの神社とお寺をご紹介します。
【法隆寺周辺の見どころスポット①】斑鳩神社
法隆寺の北東にある斑鳩神社は、法隆寺の鬼門を守る鎮守の神社として、1324年に創建されました。祭神は菅原道真で、山道の途中には巨大なご神木がそびえています。明治時代の廃仏毀釈令によって、法隆寺内にあった総社明神、五所明神、白山権現がこちらに移されました。
現在でも、10月9、10日に行われる秋祭りではお神輿が法隆寺まで渡御し、その前で僧侶が読経を行います。今も法隆寺とゆかりの深い神社です。静かな斑鳩の雰囲気にひたれるおすすめのスポットです。
住所 | 〒636-0116 奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺北1-11-13 |
電話番号 | 0745-75-2428 |
拝観時間 |
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拝観料金 | 無料 |
駐車場の有無 | あり |
アクセス | JR法隆寺駅から徒歩約25分 または |
【法隆寺周辺の見どころスポット②】法起寺
法起寺は、法隆寺の北東約3キロメートルの場所にあるお寺です。法隆寺は聖徳太子の住居である斑鳩宮をお寺に改めたものですが、こちらの法起寺も、もとは聖徳太子の住まいだった岡本宮でした。
ここで聖徳太子は推古天皇に法華経の講義を行ったと伝えられており、そこを聖徳太子の子である山背大兄王が寺院に改築したということです。
706年に建設された三重塔のみが当初の姿を残しており、これは三重塔として日本最古のものであるため、国宝に指定されています。仏教が伝来してすぐの頃の寺院の様式を今に伝える貴重な文化財として、法隆寺とともに世界遺産に含まれています。
お寺周辺にコスモスが咲き乱れる秋に行くのがおすすめです。
住所 | 〒630-0102 奈良県生駒郡斑鳩町大字岡本1873 |
電話番号 | 0745-75-5559 |
拝観時間 |
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拝観料金 | 一般:300円 小学生:200円 |
駐車場の有無 | なし |
アクセス | JR法隆寺駅から徒歩約35分 または (バスの運行は土・日曜のみ) |
見どころたくさんの法隆寺へ出かけよう!
以上、奈良県の法隆寺とその周辺のおすすめスポットについてご紹介しました。
飛鳥時代の代表的な寺院である法隆寺は、仏教伝来最初期のお寺の姿を今に伝える貴重な建築と美しい仏像群が魅力です。おおらかな奈良の空の下で、古代の息吹に触れる旅に出かけましょう。