嘆きの壁(イスラエル・エルサレム)はなぜユダヤ教の神聖な場所?
イスラエルの聖都、エルサレムに「嘆きの壁」と呼ばれる壁があります。世界中のユダヤ教徒の聖地ともいわれている壁。毎日この壁に祈りを捧げる人がたくさんいます。なぜ、この壁が聖地と呼ばれるのでしょうか。どんな歴史があるのでしょうか。嘆きの壁をご紹介します。
目次
イスラエルのエルサレムにある「嘆きの壁」について紹介!
日本から12.000KM以上離れたイスラエルは、地中海に面した国です。パレスチナ問題などが日本のニュースでも取り上げらていますね。
イスラエルの聖都、エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地とされていて、どの宗教にとっても聖地なのです。
嘆きの壁はユダヤ教で最も神聖な地
「嘆きの壁」があるエルサレムは、ユダヤ教徒にとって最大の聖地です。ユダヤ教徒と言っても大きく分けて「世俗派」「正統派」「超正統派」があります。
どの宗派の信者にとっても聖地です。
ユダヤ教の超正統派と正統派の違い
世界のユダヤ人総人口が約1350万人なのに対し、イスラエルのユダヤ人人口が460万人と、実に1/3を占めています。
また、正統派の人々はイスラエルの全人口の10~20%を占めています。戒律を厳しく守っている「正統派」と「超正統派」。
一体どんな違いがあるのでしょうか。
正統派とは
彼らは、旧約聖書の戒律を厳しく守る宗派です。 たくさんある決まりを守って生活しています。
旧約聖書とは新約聖書との対比の言い方であり、ユダヤ教の人々にとっては旧約聖書が唯一の 聖書(タハナ)なのです。
どのような戒律があるのでしょうか。
- 結婚や離婚、改宗はユダヤ教先導師の「ラビ」のみが行う
- 「カシュルート」と呼ばれる食事の規律がある
食べてよいものといけないものがとても厳格に区別されています。
認められた食材を選ぶのは主婦の仕事で、不明な食材は、ラビに相談をして、判断を下してもらうほど厳格なのです。
食べても良いもの | 食べてはいけないもの | |
魚介類 | ウロコのある魚 | タコやイカ、貝類などウロコのないもの |
動物 | 牛や羊のようにひづめが分かれていないもの | 豚などひづめが分かれているもの |
鳥類 | 飛べる鳥 | 鶏などの飛べない鳥 |
- 避妊が禁止されている
- 婚前前の男女は厳しく区別されている
婚前前の男女は一緒に歩くことも禁止されていて、公共機関でも別々に座ります。
- 服装の規定が厳しい
特に女性は、ヒジ、ヒザ、鎖骨を出してはいけない。また、派手な色や模様、体のラインが出る服は禁止されています。
そんな規制の中でもおしゃれを楽しみたいと、ユダヤ教徒の女性が立ち上げたファッションブランドがあります。
超正統派とは
イスラエルの超正統派の人たちは、わずか2%と言われていて、「神を畏れる人」という意味を持つ「ハレディム」と呼ばれています。
正統派の人々の戒律に加え更に厳しい戒律があり、その戒律を厳格に守って生活しています。
- 服装の規定が更に厳しい
正統派よりもより戒律が厳しく、服装は慎み深いことが基本とされています。男性は写真のように、帽子、コート、ズボンと全身黒づくめの服装が基本です。
もみあげを剃らないのも戒律なのだそうです。
また、女性は正統派と同じような決まりがあり、襟元の開かない服にロングスカートが基本です。
「髪は男性を魅了するもの」と考えられていて、既婚者はスカーフを被ることが多いです。中には、髪の毛を全て剃ったり、カツラを付けている人もいます。
このカツラもお洒落すぎると男性から注意されるのだそうです。
- テレビやインターネットもダメ
19世紀の生活を守り続けていて、テレビは見ません。また、インターネットは大きな危険をもたらすものと考えられていて、インターネットを使う仕事も良いとされていないようです。
- 男性は働かない
「信仰を極めることが仕事」という考えが根底にあるため、男性は会社に勤めるなどの労働をしません。
地域密着の仕事をしている人はいますが、半数は政府からの援助金で生活している人が多く、中には奥さんが働きに出る家もあります。
「嘆きの壁」の前で毎日祈る超正統派の人々が多いのも、そのためです。
- 宗教学校に通う
「聖書を究めることで、神がユダヤを守っている」と考えられてる為、超正統派の子ども達は「宗教学校」に通います。
ユダヤの経典、伝統、習慣に重点を置いた教育を受けています。
また、イスラエルでは18歳になったら3年間の兵役につかなくてなならない、徴兵制度があります。
しかしながら、宗教学校に進学した生徒には、徴兵の免役制度があります。
嘆きの壁がなぜユダヤ教で最も神聖な地とされるの?
パレスチナの人々を追い出すような形となった、現在のイスラエル建国を超正統派の人々は祝福していません。
そのため、独立記念日を無視したり、時にはイスラエルの国旗を燃やすこともあります。
「嘆きの壁」に訪れるユダヤ教徒の人々の中には、イスラエルの再建を望む人達がたくさんいます。
第一神殿
エルサレムに建てられた第一神殿は、紀元前10世紀にソロモンが王が建てた神殿です。「ソロモン神殿」とも呼ばれる神殿は、「美しさの極み」「偉大な王の町」と言われています。
この神殿には、モーゼの十戒が刻まれた石板などが入った「約束の箱」が収められていました。
しかし 紀元前586年、バビロン捕囚により跡形もなく破壊されてしまい、ユダヤ教徒の人たちも捕虜となりました。
第二神殿
ユダヤ教徒の人々が解放された後の紀元前516年、ヘデロ王が建てたのが第二神殿、「ヘデロ神殿」と呼ばれる神殿です。
第一神殿の代わりに建てられた神殿でした。
地中海から大理石を輸入するなど、長い年月とお金をかけて完成したヘデロ神殿は、「ヘデロの神殿を見ないうちは、壮麗な建物をみたとは言えない」と言われるほど美しかったと言われています。
ユダヤ教の神殿は2度破壊された
エルサレムにある「嘆きの壁」。この場所には神殿が2度作られました。「ソロモン宮殿」と「ヘデロ宮殿」です。
しかし、 「ヘデロ宮殿」もユダヤ戦争の後、ローマ帝国とその同盟軍により全て破壊されてしまいました。
ユダヤ教徒の聖地であるエルサレムの宮殿は、2度も破壊されてしまったのです。
唯一残された部分が嘆きの壁
「嘆きの壁」は 地上に部分だけでも長さ約50メートル、高さ約20メートルと大きな壁です。かつてあった第二神殿の西側だったため、「Westen Wall」と呼ばれています。
この「嘆き壁」の土台部分は全て残っていて、地下に入り見学することができます。
ちなみに、「嘆きの壁」の下から7段目までが第二神殿、8段目から11段目がウマイヤ朝とファティマ朝、12段目以上がオスマン帝国時代つ造られたものです。
ユダヤ教の人は嘆きの壁で何をするの?
「嘆きの壁」が神聖な場所であることは分かりました。では、一体ユダヤ教の人々は「嘆きの壁」に向かって何をするのでしょうか。
祈りを捧げる
多くのユダヤ教徒は、「嘆き壁」に向かって祈りを捧げています。 神殿が破壊されたことを嘆き、神のみがイスラエルの建国を成せると固く信じているのです。
また、この場所には机と椅子が用意されていて、この場で勉強する人もいます。神の前で信仰を究めているのです。
壁の隙間に挟まれた紙の意味は?
「嘆きの壁」に近づくと、石の隙間にたくさんの手紙が挟まれているのが分かります。これはユダヤ人の嘆きや祈りの想いが込められた手紙なのです。
かつて「ヤハウェ」の神殿であったこの壁に手紙を入れると、神に祈りが届くと信じられています。
「ヤハウェ」はユダヤ人にとって唯一の神なのです。
嘆きの壁での注意点
「嘆きの壁」には、毎日たくさんのユダヤ人たちが祈りを捧げています。中には数時間以上祈りを捧げるような方もいますし、破壊された壁を眺めながら涙を流している人もいます。
「嘆きの壁」はユダヤ人にとっては神聖な場所に加え、とてもデリケートな場所でもあるため、お祈りの邪魔にならないよう注意が必要です。
「嘆きの壁」を傷つけたり、落書きをするなどの行為は絶対にしてはいけません。
入り口で帽子(キッパ)をつける
「キッパ」と呼ばれる帽子は、ユダヤ教徒を信仰している証です。これは男性がかぶる帽子です。
「嘆きの壁」に入る男性は異教徒もキッパを被らなくてはなりません。丸くて小さな帽子です。
「嘆きの壁」に向かう途中で、無料で借りられることができます。また、「嘆きの壁」を離れるときには返却するのを忘れないように注意してください。
男性と女性で入れる場所が違う
「嘆きの壁」は、男性と女性によって入れる場所が違います。ユダヤ教では、夫婦や肉親以外の男女が、接触する事を禁じているためです。
その為、夫婦や家族であっても別々の場所でお祈りをします。「嘆きの壁」に向かって左手が男性、右手が女性に分かれています。
ただし、2016年にイスラエル政府は、肉親や夫婦でともに祈りができるように、男女礼拝可能な地域を認めるようになりました。
シャバットの日は写真撮影禁止
「ジャバット」とは、安息日のことです。ジャバットは金曜日の日没から土曜日の日没までと定められていて、この日は働くことも禁止されています。
ジャバットの日は、「嘆きの壁」付近で写真を撮ることも禁止されているので注意してください。
なぜ写真を撮ってはいけないのか
「働く」と言っても、会社に行くなどのことを指すだけではありません。一切の労働が禁止されているのです。
現代社会においては、火をつけたりボタンを押すことも禁止されているのです。そのため、エレベーターのボタンも押すことができません。ジャバットの日は、エレベーターが各階に停まったり、階段を使用するのです。
スマートフォンなどのボタンも押せないので、ジャバットの日は携帯電話も使用しません。
そのため、シャッターを押さなくてはならないスマートフォンやカメラもタブーとされているのです。
外国人が他の場所でボタンを押すのは特に問題ないようですが、嘆きの壁の前でシャッターボタンを押すのは控えましょう。
嘆きの壁への行き方とおすすめグルメ
上記で述べた通り、カシュルートという食事の決まりがあるユダヤ教ですが、エルサレムの旧市街にもレストランがあり、カシュルートの食事をを食べることができます。
嘆きの壁を見学した後にぜひ立ち寄りたいお店です。
嘆きの壁へのアクセス
「嘆きの壁」は、イスラエルのエルサレム旧市街にあります。イスラエルの首都は「テルアビブ」。そこからエルサレムに向かわなくてはなりません。
イスラエルは「エルサレム」を首都としていますが、国際社会はそれを認めていないのです。したがって、イスラエルの首都は「エルサレム」ではなく、「テルアビブ」です。
「エルサレム」は「聖都」という位置づけで表現されることが多いのです。
イスラエル入国にビザが必要か
2020年1月現在、観光目的の日本人の場合、3か月以内の滞在であればビザは必要ありません。しかし、パスポートの残存有効期間が、入国時に6か月以上ないと入国できないので、パスポートの残り期間を必ず確認しましょう。
また、イスラエルの入国審査が終了すると、名刺サイズの青い入国審査証がい一緒に渡されます。これは、ホテルのチェックインや出国時に必要になるので、紛失しないよう、保管に十分な注意が必要です。
エルサレムまでの行き方
イスラエルの首都、テルアビブの中央駅(Arlozorov)か、ベン・グリオン国際空港からシャトルバスが出ています。No.405のバスで、値段は20シュケル程度です。
所要時間はどちらも約1時間程度です。
「ネシェル」と呼ばれる乗合タクシーも出ていて、50シュケル前後でエルサレムの町まで行けます。
また、タクシーやレンタカーでエルサレムまで行く方法があります。日本の免許証と国際免許証を持っていればレンタカーを借りることができます。
ただし、日本とは逆の右側通行となっているので注意してください。
旧市街は壁で囲まれている
「嘆きの壁」がある旧市街は、その四方を壁で囲まれています。そのため、旧市街に入るには、いくつかあるゲートから入らなければなりません。
ゲートでセキュリティーチェックを受けて中に入ります。迷路のように入り組んでいて、現在は、ムスリム地区、キリスト地区、ユダヤ地区、アルメニア地区の4区画に分けられています。
ユダヤ教徒の聖地である「神殿の丘と「嘆きの壁」以外にも、「キリスト教徒の「聖墳墓教会」ムスリムにとっての「岩のドーム」や「アル=アクサ―・モスク」など見所がたくさんあります。
エルサレムの旧市街は、1981年に世界文化遺産に登録されています。
ユダヤ料理を堪能できる「Between the Arches Restaurant」
コーシェルが食べられるレストランですが、それだけではありません。古代の金庫室の地下にあるお店で、オリジナルデザインの装飾が施されています。
とてもユニークな雰囲気です。デザートなどのメニューもあるので、立ち寄ってみたいお店です。
住所 | Hagai 174, Jerusalem |
電話番号 | +972 53-941-9157 |
営業時間・定休日 | 9:00~18:00/金・土定休日 |
平均予算 | 1人10~100シュケル(約320円~3200円) |
アクセス | 嘆きの壁から徒歩2分 |
公式URL |
入国検査よりも厳しい出国検査
入国検査も厳しいが、出国検査は世界一厳しいと言われるイスラエル。 チェックされるのは荷物だけではなく、イスラエルに来た目的や国籍などを問われることが多いのです。
何人で来たのか、自分で手配したのか、滞在日数は何日間か、イスラエルで誰かに会っていないか、などを聞かれることも多くあります。
特に、イスラム圏への渡航履歴がある場合は、出入国の検査も厳しくなる傾向にあるようです。
カメラで撮影寄進場所を写していないか、などのチェックがある場合もあるため、一般的な国より出国手続きに時間がかかると思っていた方が良いでしょう。
聖地を堪能しよう
古くからの戒律、昔からの生活を守っている人たちが暮らすイスラエル。一方で、ハイテク分野産業が進んでおりハイテク国家でもあります。イスラエルのGDPは世界26位とイタリアやスペインよりも上位に入る先進国なのです。
また、 イスラエルはさまざまな顔を持っています。先進国の街とタイムスリップしたようなエルサレムの旧市街、実際に行ってその空気に触れてみてください。