ノートルダム大聖堂のステンドグラスの魅力を紹介!バラ窓の現在も
ノートルダム大聖堂のステンドグラスはフランス観光には欠かせない一大傑作です。先日の火災を免れて、いまも健在しています。修復工事を経てかつてのようにノートルダム大聖堂のバラ窓などのステンドグラスを眺められる日がくることを世界中が待ち望んでいます。
目次
パリの名所【ノートルダム大聖堂】を紹介!
パリに訪れたら一度は行きたいのが有名なノートルダム大聖堂です。2019年4月15日の火災は世界中に衝撃を与えましたが、現在は修復に向けて懸命な活動が予定されています。
パリの世界遺産の一つであり、ビクトル・ユゴーの小説「ノートルダムのせむし男」の舞台としても人気の高い大聖堂です。世界中の観光客が詰めかける大聖堂の魅力をご紹介します。
ノートルダム大聖堂とは
フランスはパリの中央、シテ島にあるカトリックの大聖堂です。1225年に完成した初期のゴシック建築の傑作で、フランスの国のシンボル的建築物として国民に親しまれています。とくにパリの歴史的イベントに多く登場してきたことから、市民によってはパリの守護神ともいえる存在です。
それを象徴するかのように、ノートルダム大聖堂正面のほど近くにはゼロメートル地点があります。パリを起点とする高速道路はすべてがこの地点からの距離を測っています。
現在のフランスではカトリック教を実行する信者の数は減っていますが、信徒が少なくなったいまでも、国教であったころから続くフランス文化のシンボルとして多くの人に親しまれています。
火災により失われたノートルダム大聖堂のステンドグラス
2019年4月15日の夜に起こった火災で、ノートルダム大聖堂は800年近くの歴史で最大の損害を受けました。
火災直前に行われていた改修作業の屋根部分の足場付近からの原因不明の出火により、トタン屋根と木造の屋根組みがほぼ全焼し、尖塔が崩壊しました。尖塔に置かれていたフランスを象徴するニワトリの飾りも熱で落下しました。
屋根を嘗め尽くす炎の映像は、テレビ中継やソーシャルネットワークの情報でリアルタイムに放映され、火災の動向をつぶさに目にした人には、歴史的文化遺産ノートルダム大聖堂の存続は絶望的に見えたのです。
テレビ中継では、有名な文化財である3つのバラ窓のうち、南側のバラ窓のすぐ上の窓からステンドグラスを破って踊る火が見え、誰もがバラ窓の存続を危ぶみました。
しかし、消防士の活躍により、有名なバラ窓は奇跡的に難を逃れたました。現在は痛んだ大聖堂全体の修復が計画され、その工事の動向が注目されています。
ノートルダム大聖堂のステンドグラス「バラ窓」の魅力
ノートルダム大聖堂内部にはおびただしい数のステンドグラスがあります。かつてはこの美しい色をだすために、遠く離れた国からラピスラズリなどの天然の鉱石を運んだものでした。
それを可能にするほど当時の教会には資金が集中し、並外れた財力と権力が集中していたのです。美しい色彩に、栄華を極めた当時がしのばれます。ノートルダム大聖堂のステンドグラスのなかでも特に有名なのがバラ窓です。
バラ窓とは?
バラ窓とは、12~13世紀のカトリック教会に見られる花びら状に広がった巨大な窓の形状をいいます。
中世の教会建築技術はこの頃大きな躍進を遂げました。フライングバットレス(飛梁)が開発されて壁面の荷重を地面に逃すことが可能になったのです。教会はより高く、より薄い壁になっていきました。窓も大きく穿たれるようになりました。
ステンドグラスは7世紀にサンドニ教会のシュガー神父が始めたとされています。中世の信徒たちは文字が読めず、キリスト教の聖人の生涯や逸話を彼らに視覚的に教えるためには大変効果的でした。
バラ窓の中央にはイエスキリストや聖母マリアが描かれています。その光の環はキリストによるあまねく地上支配のシンボルになっています。神を中心に世界があるという思想を具象化したものなのです。
バラ状に広がったステンドグラスのことをフランス語では花と同じく「バラ(rose)」と呼びます。これは形状が車輪(roue)に似ており、また聖母マリアを「バラの貴婦人」と呼ぶことからのいわれがきているとされています。
圧巻の美しさ「バラ窓」
ノートルダム大聖堂には3つのバラ窓(西側正面ファサードと南北)があります。南側の翼廊のバラ窓はもっとも古く保存状態がよいものです。
このバラ窓は、4重の円で構成された84枚のガラスでできています。キリストの12弟子や聖人がともに表されています。3と4番目の円は新旧約聖書の場面で、出エジプト、病人の癒し、ソロモン王の偽証、受胎告知、アダムとイブ、イエスの復活なども描かれています。
バラ窓のすぐ下には、横並びのステンドグラスがあります。偉大な預言者たちであるイザヤ、ダニエル、エゼキエル、エレミアが色鮮やかにたたずんでいます。その肩には4人の福音家であるマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネがいます。
これは13世紀のシャルトルの司教ベルトランの瞑想を表したものです。「私たちは偉大な人々の肩に乗っている小人のようなものだ。私たちの身体が大きくとも、より鋭い視点を持とうとも、福音書家たちの偉大な功績があってのことなのである」という意味を持っています。
西側正面ファサードのバラ窓は3重の円に24の対角線4がひかれています。中央には聖母マリアが子どものイエスを抱えています。このバラ窓の上部半分は悪徳と美徳を対にして表しています。窓の下半分は、12星座とそれに関する一年の仕事が表されています。
「シャルトルブルー」とは別の美しさ
フランスではノートルダム大聖堂のほかに、パリの南西90㎞にあるシャルトル大聖堂などが有名です。シャルトル大聖堂のステンドグラスは「シャルトルブルー」として輝くような青が美しく有名です。
世界中の人々が訪れるパリのノートルダム大聖堂のステンドグラスは、青と赤の色彩が醸し出すハーモニーが特徴です。当時の着色に使われたのはラピスラズリなどの鉱物でした。
不純物が混じった手作りガラスのもつ味わいのある凹凸で、さらに深遠な色を生み出しています。暗い聖堂内に溢れる鮮やかな光は、人々の心を打つ美しさです。
キリスト教の歴史が刻まれたステンドグラス
南側のバラ窓は1260年につくられました。聖ルイ王により奉納されたもので、聖ルイ王が奉納した聖遺物はいばらの冠やチュニックなど数多くがこの大聖堂に残されています。
ステンドグラスは時代とともに大聖堂は風雨をしのんできました。その間一度も掃除されることがなかったので、15世紀になると変色の問題がでてきました。その後さらに輝きが消えたり色あせてしまったため、1725年から1727年のあいだ、ノアイユ枢機卿が出資して一部の修復が行われました。
19世紀にはヴィオレルデュックがシャルトルのステンドグラスからヒントを得て、中世のエスプリに見合ったデザインが創り出されました。ステンドグラスの歴史は、フランスが国教の場として心血を注いできた歴史を感じさせます。
【パリ】ノートルダム大聖堂の現在
ノートルダム大聖堂のトタン屋根と尖塔が燃え落ちたため、鉛で汚染された大聖堂内の洗浄が行われました。鉛の汚染がひどいため、作業は時間をかけて行われています。
そもそも建設に100年かかるといわれている大規模な大聖堂ですから、炎のダメージから完全に回復させるには気の遠くなるような時間がかかるのも覚悟すべきかもしれません。
美術品と聖遺物は無事
ノートルダム大聖堂の有名な聖遺物のひとつで、カトリック教会が所有する聖遺物のなかでも大変重要とされている「キリストのいばらの冠」(写真上)は難を逃れました。消防隊員が身を挺して火災から運び足したそうです。
この冠は、イエス・キリストがはりつけにされるときに被っていたものとされています。また、もう一つの重要聖遺物であり、かつてはいばらの冠の所有者であったという聖ルイ(ルイ9世)が着用したというマントも無事でした。
火災は主に屋根部分であったため、絵画や彫刻等の大聖堂内の美術品に直接被害は及ばなかったようです。
残ったステンドグラス
炎で吹き飛んだ屋根付近の一部のステンドグラスですが、どのようなものであったか詳細は不明です。幸いなことに、バラ窓をはじめ、有名なステンドグラスは火災を免れています。
多くの人々から再建を見守られている
幸いなことに、バラ窓は焼け落ちずに残りました。火災で失われたのは屋根と尖塔、一部の石壁です。また、火災で落ちた尖塔先端のニワトリは、がれきの中から発見されました。落下の衝撃でゆがみながらも溶けずに無事発見されたことが、人々に希望の光を与えました。
大聖堂には火災前の修復工事用の足場も火災で崩れた状態で残っています。つまり火災後の後作業さえいまだに進んでいないのです。さらに、高温で大聖堂自体があぶられたことや消火活動のダメージもあることから、大聖堂自体の骨組みの強化が必要になってきます。
現在、種々の工事が新型コロナウイルスによる工事要員の自宅待機のため、中断しています。修復工事の開始は2021年初頭といわれています。
火災後は多くの人々が寄付を申し出て大統領も再建を約束したこともあり、修復が開始されるのを待つばかりです。
【パリ】ノートルダム大聖堂の詳細
現在、大聖堂の中に入ることはできません。カトリックのミサや行事などはまだノートルダム大聖堂では行うことができません。とはいえ、ノートルダム大聖堂はフランスの大司教座であり、カトリック教会にとって大変重要な役割を占めています。
火災から1年を迎えようとするイースター直前の聖金曜日(2020年4月10日)に、大聖堂内で特別に小規模ながら祈りの時間が持たれることになるなど、小規模な活動がされています。
ノートルダム大聖堂付きの聖職者たちは、パリやフランス各地の教会に分かれて活動を続けており、人々が昔のように集えるようになるその日まで、ノートルダム大聖堂の活動を永続させようという試みが続けられています。
ノートルダム大聖堂へのアクセス方法
- ノートルダム大聖堂はパリの真ん中、シテ島にあります。メトロ4番線 Cité駅から徒歩1分またはメトロ4番線RER B線およびC線 Saint-Michel駅から徒歩1分ほどです。セーヌ河畔に沿って歩けばすぐにみつかります。
- 観光遊覧船バトームーシュなどに乗ってのセーヌ川からの眺めはとっておきのシャッターポイントです。補強材や足場に囲まれたノートルダム大聖堂の満身創痍の姿は、まるで火災と戦った雄姿のようです。
ノートルダム大聖堂の基本情報
住所 | Cathédrale Notre-Dame de Paris |
営業時間・休業日 | 現在閉鎖中(付近から眺めるのは可能) |
アクセス |
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公式URL | https://www.notredamedeparis.fr/ |
ノートルダム大聖堂のステンドグラスの歴史を感じよう!
いつの日かまた観光客が内部に入れる日が来たら、ぜひ訪問したいノートルダム大聖堂。何年後になるかわかりませんが、いまから大聖堂の姿を想像しつつ、修復工事の様子を見守ってみませんか。