和歌山弁(紀州弁)の特徴は?使い方やかわいい方言なども紹介!
方言は日本語に趣と温かさを与えます。様々な方言が日本中で話されていますが、今ひそかに話題になっているのが和歌山弁です。かわいいと評判の和歌山弁とはどんな方言でしょうか。この記事で紀州弁とも呼ばれる和歌山弁の特徴やその使い方について解説します。
目次
和歌山県の方言「和歌山弁(紀州弁)」がかわいい!
和歌山県は、大阪、兵庫県、京都府、奈良県、三重県、滋賀県と共に近畿地方に属しています。そのため和歌山弁は、関西弁の影響を受けた方言の1つと見られがちです。ところが和歌山弁をよく聞いてみると、他の関西弁にはない独特の訛りがあり、その訛りのためにとても親しみやすくかわいいと評判です。
和歌山弁(紀州弁)の特徴
和歌山県は、江戸時代に徳川御三家の1つである紀州徳川家が治める紀州藩として栄えた場所です。そのため和歌山弁は紀州弁とも呼ばれています。和歌山県は熊野古道や高野山で有名な山岳地帯です。主要街道から離れた場所に位置し、そのため歴史的に隔離され外部からの流通や交流が限られていました。それは方言にも表れています。
和歌山弁は他の近畿地方の関西弁とは違い、すでに廃れてしまった古い言葉やイントネーションが今も息づいています。
長音を短くして発音する
近畿地方で聞かれる関西弁全般に言えることですが、和歌山弁の使い方に関しても、他の関西弁同様に長音を短くして発音します。例えば「思うた」は「おもた」になり、「違うた」は「ちごた」に、「赤うなる」は「あこなる」と言った具合に変化します。
「彼女があの子のことを好きやと思うたらしく、あの子顔が赤うなったよ」という一般的な関西弁は「彼女があの子を好きやとおもたらしく、あの子顔があこなったよ」と和歌山弁では変化します。
子音を発音しない
和歌山弁の特徴の中には、「s・r・w」と言った子音を発音せずに母音のみで発音することも挙げられます。例えば、「ばっかり」は「ばかい」に、「起こしたる」は「おこいたる」に、「話した」は「はないさ」に、「明日」は「あいさ」に、「綿」は「あた」へと変化します。
だ行とら行が混同される
和歌山弁の使い方の別の特徴は、だ行とら行が混同されることです。言い換えると和歌山弁を喋る人の多くは、だ行を発音できず、だ行が用いられる言葉はざ行に置き換えて言ってしまいます。こうした和歌山弁の傾向は「ザダラ変換」と呼ばれています。
例えば、「全然」は「でんでん」に、「銅像」は「どうどう」に、「残高」は「だんだか」に、「雑巾」は「どうきん」に、「身体」は「かだら」と言います。
敬語がない
和歌山弁の使い方に関してよく言われるもう1つの特徴は、和歌山弁には敬語がほとんどないことです。基本的にどの方言にも敬語、つまり目上の人への敬意を表す言い方があるものですが、和歌山弁にはそれがほとんどありません。
もちろん和歌山県民が敬意を知らない人たちだ、と言うことではありません。理由は、歴史的に上下関係のない人民平等が広く根付いている土地柄だからだと言われています。現在では大阪弁や京都弁で使われる「~はる」を敬語として使っています。
和歌山弁(紀州弁)の使い方講座【語尾編】
では実際に、和歌山弁を使うと日本語がどのように変化するかを確認していきます。和歌山弁には特殊な4つの語尾があります。和歌山弁の中で最も容易に学べるこれら4つの語尾をまず取り上げ、和歌山弁を練習しその魅力を体現してみましょう。
1.「~よ」
最初に取り上げる和歌山弁の特殊な語尾は「~よ」です。日常の会話で非常に良く耳にする語尾で、標準語の「~です」「~だよ」「~ます」に相当します。例えば「もういいです」は「もうええてよ」に変化し語尾は「よ」になります。また「ごめんね」は「わりよー」に変化し語尾は「よ」になります。
2.「~ら」
和歌山弁の特殊な語尾には「~ら」もあります。この語尾は友達と一緒に連れ添っているときなどによく用いられます。標準語の「~しよう」に相当します。例えば「何か食べに行こうよ」は「何か食べに行こうら」となります
3.「~け」
和歌山弁の特殊な別の語尾には「~け」もあります。文の語尾に「け」を付けると疑問文や嘆願分になります。標準語の「~してください」「~しようね」「~して欲しい」に相当します。「そうなの?」は「そうなんけ?」に、「違うの?」「は「違うんけ?」に変化します。語尾が「け」で終わることを相手から言われたら、かならず返答しましょう。
4.「しかええ」
最後に取り上げる和歌山弁の特殊な語尾は「しかええ」です。英語で言う比較級に相当するのがこの語尾です。標準語では「~した方がいい」「~の方がいい」となります。「コーヒーと紅茶、どっちしかええ?」と言う感じで使用します。
和歌山弁(紀州弁)の使い方講座【人編】
次に紹介するのは、和歌山弁で自分という一人称をどのように表現するのか、また家族の構成員をどのように表現するのかということです。聞き慣れた表現もありますが、初めて耳にするものもあります。ぜひ注目してください。
1.「わい」
和歌山弁は、訛りや音がかわいらしいと言われますが、男らしいと感じる言い回しもあります。それが主に男性が自分という一人称に用いる表現です。標準語で「僕」「私」「俺」に相当する和歌山弁の一人称は「わい」「わえ」「あが」です。これら3つの表現は、主に和歌山県の中部から南部にかけて広く用いられています。
男性が自分を指す一人称が「私たち」という一人称複数になると「うら」または「あがら」に変化します。女性は「うち」を用います。
2.「てき」
次に紹介するのは和歌山弁の二人称です。標準語では「あなた」「君」「おまえ」などが用いられますが、和歌山弁では「てき」または「てきゃ」を用います。二人称複数、つまり「あなたたち」「君たち」「おまえたち」は、和歌山弁では「てきゃら」になります。残念ながら現在では年配の人しか使われていません。
3.「おとん」「おかん」
和歌山弁では家族の構成員をどのように呼ぶのでしょうか。関西地方ではお父さんやお母さんのことを「おとん」「おかん」と今でも呼びます。和歌山件も近畿地方の関西圏の一部ですが、「おとん」「おかん」より「お父さん」「お母さん」の方が広く用いられています。
4.「いもと」「おとと」
和歌山弁では「弟」や「妹」のことを「おとと」「いもと」と言い、母音の「う」を発音しません。「お兄さん」「お姉さん」は「あにやん」「あねやん」と言います。標準語では「お兄さん」「お姉さん」を「あにさん」「あねさん」と親しみを込めて呼びますが、「さ」が「や」に変化したのが和歌山弁です。
5.「おいやん」
和歌山弁では「おじさん」のことを「おいやん」と言います。「おいやん」は親族の「おじさん」に対してのみ用いられるのではなく、中高年の男性全般にも用いられます。関西弁で「おちゃん」という呼称が、身内だけに限定されているわけではないのと同様です。ただ和歌山弁には「おばさん」を呼ぶ独特の表現は存在しません。
和歌山弁(紀州弁)の使い方講座【名詞編】
ここまで和歌山弁の語尾の使い方と自分や家族を含めた他の人の呼び方について紹介してきました。ここからは、和歌山弁の名詞を表にして紹介します。和歌山弁を流ちょうに話せなくても、単語をつなぎ合わせていけば意味は通じます。英語と同じ要領です。あ行からわ行までを一挙に紹介します。
和歌山弁の名詞 | 意味 |
あいた | 明日 |
あかい | 明るい |
あま | ゴキブリ |
あんじょう | しっかり、きちんと |
いがむ | 曲がる、歪む |
えぞる | なぞる |
おいだん | 花魁 |
おっぱ | おんぶ |
おもしゃい | 面白い |
かいだるい | かったるい |
かだら | からだ |
きょうわ | 今日 |
きんの | 昨日 |
クリーム | アイスクリーム |
ごし | ~と共に |
こまる | 歯に物が挟まる |
こらえる | 許す |
ころも | こども |
さかっちょ | 逆さま |
さかばり | トゲ |
さし | ものさし |
ざついじょ | 脱衣所 |
じゃいけん | じゃんけん |
しゃるく | 歩く |
すえる | 腐る |
すこい | ずるい |
たいたん | 煮物 |
たかる | 上に乗る |
たつ | 嫌になる |
ちょっきし | 丁度、ぴったり |
つく | 押す |
つめる | 指を挟む |
つれもて | 一緒に |
でんだい | ぜんざい |
なながつ | 7月(しちがつ) |
なるしい | 穏やかな |
にゅうにゅう | 牛乳 |
にんにこ | おにぎり |
ぬがる | 刺さる |
ぬくい | 温かい |
ねぶる | 瞼を閉じる |
のす | 登りつめる |
はつ | 叩く |
はつる | 削る、とる |
ふてる | 捨てる |
ふわわり | 世間体が悪いこと |
へくる | 盗む |
ほたえる | ふざける |
ほんな | そのような |
ほる | 放置する |
まう | 目がまわる |
まくれる | 転落する |
みずせった | ビーチサンダル |
むさい | 汚い |
めらか | めだか |
もじける | 壊れる |
やつす | 着飾る |
やぶつ | 破る |
ゆんべ | 昨夜 |
ようさん | たくさん |
らくさげない | 落ちつかない |
離合(りごう) | 車同士がすれ違うこと |
レイコー | アイスコーヒー |
れいどうこ | 冷蔵庫 |
ろくすっと | ろくに |
わく | チョコレートや飴がドロドロになって溶けること |
わやくちゃ | めちゃくちゃ |
わりき | 薪 |
わわく | わいわい話す |
和歌山弁(紀州弁)のかわいい方言を紹介!
和歌山弁は、関西弁でありながら訛りが異なり、とてもかわいい、という評判を得ていることは、すでにこの記事で紹介しました。実際多くの他県の人が和歌山弁をそのように評価することには理由があります。和歌山弁にはかわいい言い回しがたくさんあり、それを聞いて「和歌山弁はかわいい」という評判が定着しました。
これからそんなかわいい和歌山弁を紹介します。
1.「やん」
最初に紹介するかわいい特徴的な和歌山弁は「やん」です。これは関西弁で言葉の語尾に使用する際の「やん」と同じように用いることもあれば、否定として用いる場合もあります。例えば「高くて買えない」は「高くて買えやん」と言います。また1つの文章に「やん」が何度も出てくることもあります。
「今日試験に受からなかったら、二度と合格はできないでしょう」は「今日試験に受からやんかったら、二度と合格はできやんやん」となります。
2.「ちゃあ」
次に紹介するかわいい特徴的な和歌山弁は「ちゃあ」です。 この「ちゃあ」の発音がかわいいことから、和歌山弁はかわいいという評判が広まったと言っても過言ではありません。標準語では「~してあげる」という意味になります。例えば「貸してあげる」は「貸してちゃあ」、「手伝ってあげる」は「手伝ってちゃあ」となります。
3.「にえる」
3番目に紹介するかわいい特徴的な和歌山弁は「にえる」です。 「にえる」は日本全国で和歌山県でしか用いられない「オンリーワン」方言です。意味は「青あざができること」です。例えば「昨日友達と口論になって殴られ、顔にあざができた」は「昨日友達と口論になって殴られ顔がにえた」となります。
4.「やいしょ」
4番目に紹介するかわいい特徴的な和歌山弁は「やいしょ」です。 この方言は和歌山県中部の有田地方で広く聞かれます。文章の語尾に付けて用います。使い方の例としては、「よかったいしょ」「ええわいしょ」「最近赴任された校長先生やいしょ」と使います。
意味はそれぞれ、「よかったね」「いいでしょ」「最近赴任された校長先生ですね」です。
5.「今日はは」
5番目に紹介するかわいい特徴的な和歌山弁は「今日はは」です。 意味は「今日は」です。「昨日は」「明日は」の場合は、「は」を語尾に付けることをしませんが、「今日は」の場合だけ語尾に「は」をもう1つ付けます。使い方に注意しましょう。
6.「いぬ」
6番目に紹介するかわいい特徴的な和歌山弁は「いぬ」です。 意味は「帰る」です。若者の間ではすでに死語となっている方言です。この方言は動詞なので状況や時制によって変化します。使い方としては、例えば「じゃあ帰るね」は「ほないんでくら」と言い、「じゃあ帰ろうか」は「ほないのか」と言います。
7.「かえらし」
最後に紹介するかわいい特徴的な和歌山弁は「かえらし」です。意味は「かわいい」です。「かわいらしい」から派生したのではと言われています。使い方は、例えば「この子犬かわいい」は「この子犬かえらしょー」と言います。
かわいい和歌山弁を友達との会話でぜひ使って見よう!
和歌山弁は、関西弁に似ているところもありますが、独特の訛りや言い回しを持つ特徴的な方言です。聞いていてとてもかわいらしく、親しみを感じる方言でもあります。使い方も難しくはなく練習すればすぐに喋れるようになります。和歌山弁にぜひ挑戦してみましょう。