シャコの旬の時期・美味しい季節は?エビとの違いやおすすめの食べ方も
シャコはグロテスクな見た目が嫌われがちですが、実はとても美味しい食材です。旬のシャコは特に甘く、絶品と言われています。シャコとは、一体どんな生き物なのでしょうか。その生態や、姿がよく似ているエビとの違い、旬の時期に挑戦したいおすすめの食べ方を紹介します。
目次
絶品シャコを美味しく食べたい!
思わず遠ざけたくなる見た目とは裏腹に、繊細な味わいのあるシャコは、高価な寿司ネタとしてよく知られる食材です。
シャコは味が落ちるのが早く流通が難しいため、スーパーに並ぶこともほとんどありません。そのため「シャコの存在は知っているけど、なじみはない」という人も多いでしょう。
シャコを食べるなら、シャコ漁の盛んな地域や旬の時期を選んで、とびきり新鮮な旬のシャコを楽しみましょう。シャコの特徴をはじめ、シャコの産地として有名な地域や、おすすめの食べ方を紹介します。
そもそもシャコ(蝦蛄)とは?
シャコはエビとよく似た姿をした生き物です。江戸時代には寿司ネタのほか、おやつとして食べられるほど庶民に広がっていた食材でもあります。
かつては、食べきれずに畑の肥料にするほどとれていたシャコ。1980年ごろまでは安定して水揚げされていました。ですがそれ以降は、乱獲や気候の変化により漁獲量が減少し、流通量が少ない状況が続いています。
現在は旬の時期の水揚げ量が制限されたり、禁漁期間が設けられる地域も。各地で漁獲量を回復させるための取り組みが行われています。
シャコの特徴
シャコはエビに比べて胴体が太く、ずっしりとした見た目をしています。エビのようなハサミはなく、カマやハンマーのような形をした大きな前足(捕脚)を持っているのが特徴です。大きさは15㎝前後のものが多く、大きいものだと20㎝ほどになることもあります。
その見た目からエビと比較されることも多いシャコですが、身はエビよりもカニに近い柔らかさがあり、あっさりとした上品な甘みはエビを越えると表現する人もいるほどです。
美味しいだけじゃない!シャコのすごい力
味もさることながら、生き物としてもおもしろい特徴を持っているのがシャコの魅力。種類によっては色鮮やかなシャコも存在し、観賞用として飼育する人もいます。シャコの優れた能力としてあげられるのが「パンチの威力」と「飛び抜けた視力のよさ」です。
シャコは大きな前足(捕脚)を叩きつけて獲物をとらえます。脚をすばやく繰り出す様子は「シャコパンチ」とも呼ばれ、ダイバーがちょっかいを出して指を骨折したという噂もあるほど強力です。
さらにシャコは色の識別能力が人間の10倍あり、「円偏光」という特殊な電磁波を生き物の中で唯一認識できるともいわれています。独自の進化をとげたシャコは食材としてだけではなく、その生態にも人を惹きつけるものがあるといえるでしょう。
シャコの名前の由来
茹でるとシャクナゲのような赤紫色になることから、江戸時代には「シャクナゲ」「シャクナギ」と呼ばれていました。その呼び名がなまって「シャコ 」と呼ばれるようになったと言われています。
地域によって呼び名が変わることもあるのもシャコの特徴です。北陸では「ガザエビ」九州では「シャッパ」「シャク」と呼ばれることもあります。
食べられるシャコの種類
日本で水揚げされるシャコの多くは、「シャコ目シャコ科」に属する種類です。日本近海に生息するシャコの中には、鮮やかな模様をした種類も存在しますが、食用として流通することはほとんどありません。
食用として認識されるのは、目立った模様がなく、淡い色のシャコが主流と言えるでしょう。
シャコの旬はいつ?
1年を通してとれるシャコですが、とくにおいしく食べられる旬の時期はおもに春と秋。旬のシャコは、メスは卵を持ち、オスは身がつまって旨味が強くなるのが特徴です。
反対に1月は1年でもっとも漁獲量が少なく、シャコ自体もやせていることが多いので、シャコを食べるには向いていない時期といえます。
シャコが美味しい季節
シャコがもっとも美味しいとされるのは、3月から4月です。春はシャコの産卵時期のため、子持ちのシャコが多く水揚げされます。子持ちのメスは「カツブシ」と呼ばれ、身の中心に棒状の赤色をした卵を持っているのが特徴です。
カツブシはとくに高値で取引され、コリコリとした食感と濃厚な味わいはカラスミに例えられることもあります。
身がつまったシャコを楽しみたいなら、9月から10月にかけてがおすすめです。秋は脱皮をくり返して身がしっかりとしてくる時期でもあるので、ほかの時期とは違う、引きしまったシャコの食感が楽しめるでしょう。
場所によって旬の時期が違う
シャコの旬は日本全国、大まかな時期は同じですが、地域によって微妙に違うことがあります。本州の各地が3月ごろと9月前後に旬を迎えるのに対し、小樽など北の地方では初夏と11月前後が旬の時期にあたります。
シャコを取り寄せたり、食べに行ったりするときは、産地にも注目して旬を把握しておくといいでしょう。
シャコ漁がさかんな場所
生命力が強く適応力も高いといわれるシャコは、日本全域に生息しています。釣りをする人なら、たまたまシャコが釣れてしまったという経験もあるでしょう。
シャコは内海や泥地を好み、瀬戸内海や東京湾などの比較的あたたかい海域でよく水揚げされています。
シャコを食べるなら、どこがおすすめなのでしょうか。シャコの産地として代表的な地域を3か所紹介します。
愛知県知多半島
愛知県に2つある半島のうち、西側にあるのが知多半島。シャコの水揚げ量はつねにトップクラスを誇り、シャコの産地として全国に知られています。名古屋市の中心部から車で1時間ほどとアクセスがよく、ドライブコースとしても人気です。
伊勢湾や三河湾に囲まれた知多半島は漁業がさかんで、新鮮な魚介類をめあてに多くの観光客も集まります。
知多半島の先端に位置する南知多周辺や日間賀島、篠島などは、シャコが食べられるお店や旅館がとくに多いエリアです。
北海道小樽
運河にならぶ倉庫街やレトロな街並みが魅力的な小樽。石狩湾に面し、新鮮な海の幸を味わえるエリアでもあります。小樽のシャコはほかの地域に比べ大ぶりで、秋にとれるシャコはとくに旨味が豊富だと評判です。
小樽運河付近には新鮮な魚介をあつかう市場も多く、シャコの旬には丸々としたシャコも見つかるかもしれません。小樽のシャコ漁は期間が決められているので、解禁日や漁の期間などをチェックして訪れるようにしましょう。
北海道でシャコ漁が行われているのは石狩湾だけで、毎年11月には「小樽しゃこ祭り」で新鮮なゆでシャコやシャコ汁を楽しむこともできます。こちらもシャコが不漁だと開催されないこともあり、事前の確認が必要です。
岡山県笠岡市
岡山県笠岡市は広島県との県境に位置するエリアです。瀬戸内海に面した笠岡市には、カブトガニの繁殖地や世界にひとつしかないカブトガニ博物館などもあり「カブトガニの街」とも呼ばれています。
瀬戸内海はシャコが好む温暖で穏やかな海域です。そのためシャコ漁もさかんで、品質は高く評価されています。
なかでも笠岡市のシャコの消費量は日本トップクラスで、郷土料理「ばら寿司」の具材として使われるほか、シャコを気軽に味わえる飲食店も多く存在します。笠岡市の「市のさかな」にシャコが指定されていることからも、シャコは笠岡市に根ざした食材だと言えるでしょう。
シャコとエビの違い
姿形がエビによく似ているシャコ。エビと同じ甲殻類ですが、味にも生物学的にも大きな違いがあります。エビとシャコの違いを比較しながら紹介します。
味の違い
シャコの魅力は、優しい甘みと上品な旨味です。甲殻類特有の味わいがはっきりしているエビに比べると、シャコの味はあっさりしています。
見た目からエビに似た味を期待して「物足りない」と感じる人がいる一方、エビともカニとも表現できない不思議な味わいに夢中になる人も多いでしょう。
食感はエビのようなプリプリ感というより、カニのような柔らかい身に例えられます。
生体の違い
エビの仲間と勘違いされやすいシャコですが、同じ甲殻類でも、シャコとエビは全く別の生き物です。
エビが「真軟甲亜綱」に属するのに対し、シャコは「トゲエビ亜綱」という分類に属します。分かりやすくいうと「同じ哺乳類でも、人間とサルは違う生き物」という感覚です。
シャコは英語名で「カマキリエビ」と呼ばれるように、カマキリのような前足(捕脚)を持っています。泳ぐ姿も、エビよりも虫を思わせる動きで「ムカデみたい」と表現する人もいるようです。
旬のシャコのおすすめの食べ方
鮮度が落ちやすいシャコは、新鮮なうちに調理するのが鉄則です。シャコは死ぬと自己消化の作用で身が溶けて、水っぽくなってしまいます。活きたシャコが手に入ったら、すぐにゆでるか、冷凍して鮮度を保つようにしましょう。
鮮度が第一のシャコをおいしく食べるための調理法を紹介します。
一番おすすめは「塩ゆで」
シャコそのものの味を楽しむなら、シンプルに塩ゆでにするのがおすすめです。旬のシャコは甘みが強く、シャコの旨味をたっぷり楽しめるでしょう。
シャコを軽く洗ったら沸騰したお湯に塩を加え、生きたままシャコを入れて5分から7分くらいゆでます。塩はお湯に対し3%(お湯1ℓだと大さじ2杯)くらいの量が目安です。
シャコを洗う時は、菜箸やトングでかき混ぜるように洗いましょう。素手で触ると尾ひれのトゲが刺さったり、シャコパンチの犠牲になってしまう危険があります。
上手にゆでるコツは、たっぷりのお湯でゆでることと、ゆですぎないことです。たくさんのシャコを一気に入れると、お湯の温度が下がってゆで時間が長くなり、食感が悪くなってしまいます。
沸騰した状態を保てるように少しずつシャコを入れ、ゆで上がったらザルに上げて冷ましましょう。ゆでたシャコは冷水にさらすと水っぽくなることがあります。さっとくぐらせる程度にするか、自然に熱が冷めるのを待ちましょう。
シャコのむき方
シャコをゆでたら、殻をむきます。シャコの殻は硬いので、キッチンバサミがあると便利です。
まず頭と尻尾(V字になるように)を切り落として胴体だけの状態にし、次に両脇の殻を切り落として殻をとります。シャコの身は柔らかいので、殻をとる時は慎重に。指で身を押さえるようにするときれいに殻をとることができます。
殻がむけたら、いよいよ実食です。そのまま食べても、わさびや醤油をつけてもおいしく食べられます。サラダや巻き寿司などにするのもおすすめです。
自分で調理ができない時は、あらかじめゆでてあるシャコを選ぶという方法もあります。お店でゆでシャコを選ぶ時は、水揚げ後すぐにゆでられた「浜ゆで」のシャコを選ぶとより新鮮なシャコの味を楽しめます。
鮮度が命の「刺身」
新鮮な活シャコが手に入ったら、刺身にするのもおすすめです。醤油のほか、すだちのような柑橘類をしぼってもおいしく食べられます。
刺身にする時は、殻をむきやすくするためにいったん冷凍してから調理しましょう。冷凍する時は水を入れた容器ごと冷凍して氷づけにすると、より新鮮さを保てます。殻のむき方はゆでシャコと同じです。自然解凍でシャーベット状になってから殻をむきます。
シャコの刺身は鮮度が悪いとあたってしまうこともあり、注意が必要な調理法です。触っても動かないものや、死んで赤っぽくなっているものは絶対に生で食べないようにしましょう。
香ばしい「揚げ物」
淡白でクセのない味わいのシャコは、油とも相性抜群です。ゆでシャコに衣をつけて天ぷらや唐揚げにしたり、アヒージョにしたり、いろいろなメニューを試してみましょう。
小ぶりなシャコなら、素揚げや天ぷらにすると殻ごと食べることもできます。ゆでシャコや刺身とは違う、サクサクとした食感と殻の旨味も味わえるのでおすすめです。
シャコの旬の時期を狙って絶品料理を堪能しよう!
シャコの特徴やおすすめの調理法を紹介しました。見た目で避けられがちなシャコですが、生き物としても食材としても魅力にあふれています。
身がつまって丸々とした旬のシャコが食べられるのは春と秋。旬の時期をしっかりおさえて、絶品のシャコを味わいましょう。