合掌造りとは?構造や世界遺産の白川郷(岐阜)・五箇山(富山)を紹介
雪の中にひっそりとたたずむ姿が印象的な合掌造り。誰もが一度は見かけたことはありますが、一体どのようなものなのか知っている人は少ないのではないでしょうか?そこで今回は、日本の建築様式のひとつである合掌造りについてまとめました。
目次
合掌造りについて紹介!
雪景色の中にひっそりとたたずんでいる三角屋根の家とすぐそばに広がる豊かな田園や山々。その風景はまるで昔話の世界に入ったようで、現在では楽しむことができない貴重な風景です。そんなどこか懐かしい景色を作り出すのが合掌造りの家。
誰でも知っている日本らしい風景を作り出している合掌造り。見たことはあるのですが、一体合掌造りとはどのような建物のことを示しているのか、どんな建物なのかを知らない人も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、知っているようで知らない「合掌造り」について調べてみました。合掌造りにはどのような特徴があるのか、また合掌造りの建築物はどこで見ることができるのかなど、様々な情報についてまとめました。
合掌造りとは?
ではまずは、合掌造りとはどんな建築様式なのかを見ていきましょう。書院造や数寄屋造りなど様々な様式がある日本の建築様式。合掌造りの特徴を知って、他の建築様式との違いやメリット・デメリットを学んでみましょう。
合掌作りの特徴
合掌造りの最大の特徴は茅葺(かやぶき)という素材でできた叉首(さす)構造の屋根です。叉首とは梁の上に2つの材木を組んで棟木を支える材木のこと。材木同士が互いに支え合うことで、高い強度を生み出すのが最大の特徴です。
またこの叉首は人間が手を合わせている様子に見えることから別名「合掌」と呼ばれており、それが合掌造りの名前の由来にもなっていると言われています。
また、合掌造りの特徴はそれだけではありません。切妻造りと呼ばれる印象的な三角形の屋根も特徴の一つで、本を開いて逆さまにしたような見た目が目印になっています。
この切妻造りの屋根は日本政府が白川郷と五箇山をユネスコの世界遺産に推薦した際の定義にも含まれており、後の時代になるほど屋根の勾配が急になっているものが多いです。中には角度が60度にもなる急勾配の屋根もあるので、訪れた際には是非チェックしてみてください。
合掌造りの構造
では続いては合掌造りの構造がどのようになっているのかを見ていきましょう。積雪が多い地方に建てられている合掌造りの建物には、雪が降った時に建物が崩れたり被害を受けないように様々な工夫がなされています。
現在のようにコンクリートやプラスチックがない時代から昔の人々の知恵と工夫が詰め込まれた合掌造り。一体どのような構造になっているのでしょうか?
茅野の屋根
合掌造りの特徴でもある茅野の屋根は構造上でも重要な役割を果たしています。まず最良である茅(かや)はススキやチガヤ・ヨシといった材料が使用されており、そのどれもが水分に強いことが特徴です。
豪雪地帯に建設されている合掌造りの家は、雪などの水分に強いことが必須の条件。茅葺き屋根は雨漏りにも強く、通気性・断熱性を持つ非常に優れた構造だということができます。
家の向き(方角)
さらに特徴的なのは、合掌造りの家の向き(方角)です。合掌造りの集落に行ったことがある人はみたことがあるかもしれませんが、全ての家が南北に面して建てられています。
これは家が受ける風の抵抗を最小限にするという効果と、屋根に当たる太陽の光を季節によって調節し、夏は涼しく・冬は暖かくなるように計算されています。
合掌造りを見れる場所はどこ?
様々な知識と工夫が詰め込まれている合掌造りの建物。そんな貴重な建築物をみられる場所が日本にもあります。ここでは特に有名な場所を2箇所ご紹介していますので、次のお出かけリストに追加してみてはいかがでしょうか?
合掌造りで有名な世界遺産「白川郷」
ではまずは世界的にも有名な「白川郷」についてご紹介しましょう。岐阜県大野郡にある白川郷は大小合わせて100件の合掌造りの建物が現存しており、今でもそこで人々が生活をしているという非常に貴重な場所です。
今でも昔ながらの風景を維持しながら時が流れる白川郷。一体どんな場所なのか、見どころやアクセス方法と一緒にご紹介します。
世界遺産に登録された白川郷の合掌造り
今でも貴重な合掌造りの風景がみられる白川郷は、その景色の美しさが評価され1976年に重要伝統的建造物群保存地区として選定されました。また、約20年後の1995年にはユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されました。
白川郷が世界遺産として登録されたのは、風景や建物の美しさはもちろん住民同士の「助け合う」姿勢や文化が高く評価されたと言われています。この相互扶助の考え方は白川郷では「結」と呼ばれており、古くから伝わってきました。
雪が深い白川郷では冬の厳しい季節になると外に出ることすら難しく、家同士で助け合わないと生活ができないほどでした。そのような厳しい自然の条件が白川郷に住む住人同士の絆を深め、この「結」の文化が生まれたと言われています。
時代は進んで便利にはなりましたが白川郷にはこの文化が深く根付いており、現在でも茅葺き屋根の葺き替えを村人で協力してで行っています。またそのほかにも行事や共同作業が多く、そういった場で技術や文化が引き継がれていると言われています。
白川郷の見どころ
日本だけではなく世界からも高く評価されている白川郷。訪れた際には白川郷の合掌造り集落を必ず見ておきましょう。また外から眺めるだけではなく当時の雰囲気を楽しみたいという人は「和田家住宅」を訪れるのがおすすめ。
こちらでは貴重な合掌造りの住宅の中を見学することができます。囲炉裏やトイレ・蔵など当時の生活を感じられる設備を見学できる他、当時に使用していた道具なども一緒に公開されています。
観光客にも人気のスポットで、休日には混雑することも。ゆっくりと見学したい人は午前中の早い時間に訪れるのがおすすめです。
白川郷のベストシーズン
季節によってその姿を大きく変える白川郷。もちろんどの季節でも美しい風景を楽しむことができるのですが、ベストシーズンは12月から2月ごろになります。
雪が深い岐阜県大野郡は、この時期になるとたくさんの雪が降ります。そしてその雪が降り積もり、美しく雪化粧をした合掌造りの風景が出来上がるのです。
どっしりと降り積もった雪を屋根にのせた合掌造り集落は、まさに昔話の世界のよう。寒さを忘れて見とれてしまう美しさですので、是非ベストシーズンに訪問してみましょう。
白川郷へのアクセス方法
電車やバスなどの公共交通機関で白川郷へアクセスする人は、名古屋・金沢・高山などの駅から白川郷行きの直通バスを利用しましょう。予約制になっているので、必ず事前に確認が必要です。
また車でアクセスする人は「荘川IC」または「白川郷IC」で高速を下車し、白川郷へ向かいましょう。公共駐車場である「村営せせらぎ公園駐車場」から徒歩5分で集落に到着です。
住所 | 岐阜県大野郡白川村荻町1086 |
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アクセス | (1)高山駅からバスで50分(JR高山駅横、高山濃飛バスセンター発白川郷行き約50分、「白川郷」下車) せせらぎ公園駐車場から徒歩で5分 (2)白川郷ICから車で5分(東海北陸自動車道白川郷ICより国道156経由約5分) (3)荘川ICから車で40分(東海北陸自動車道荘川ICより国道156号経由約40分) |
駐車場の有無 | 有り |
公式URL |
白川郷だけじゃない!合掌造りが見られる「五箇山」
合掌造りと聞くと白川郷のイメージが強いですが、「五箇山」でも合掌造りの風景を楽しむことができます。五箇山は富山県南砺市にある集落で、相倉(あいのくら)と菅沼(すがぬま)と呼ばれる2つの集落からできています。
またこちらの五箇山も白川郷と同じく世界遺産に登録されている場所。古くから伝わる日本の文化を大切に保存している場所ですので、ルールやマナーを守って観光をしましょう。
またこの五箇山は民謡の宝庫と呼ばれるほどたくさんの民謡が息づいている場所です。中でも「こきりこ」や「麦屋節」は日本最古の民謡であると言われており、国の無形文化財にも指定されています。
またそれ以外にも「五箇山追分節」「といちんさ」「お小夜節」など、五箇山の人々の思いや暮らしを詰め込んだ民謡が盛りだくさん。
これらの民謡は予約しておくと五箇山にある民宿や村上家で鑑賞することができます。実際に眼の前で演奏され歌われる民謡は迫力も満点。五箇山の文化を深く知ることができるチャンスですので、是非体験してみてください。
里山を堪能できる!穴場の五箇山の合掌造り
穏やかな小川や豊かな田園に囲まれている五箇山にはゆっくりとした時間が流れ、のどかな山村風景を満喫することができます。どこか懐かしさを感じることができる風景は、日本人だけではなく外国人観光客からも大人気。毎日たくさんの人が訪れています。
また五箇山には「五箇山ぐらし案内人」という地元のガイドさんがいます。五箇山の暮らしぶりを詳しく教えてもらえるほかに、五箇山の歴史・合掌造りが受け継がれてきた理由など、様々なお話を聞くことができます。
また話を聞くだけではなく、実際に体験できるのが五箇山観光の面白いところ。雪国でも暮らしに欠かせない「ゴザ帽子」や「ワラのふかぐつ」の試着ができ、五箇山の生活を体験できるので是非チャレンジしてみてください。
五箇山の見どころ
五箇山には見どころがたくさんあるのですが、その中でもおすすめしたいのが「五箇山民俗館」です。こちらはほとんど改修されていない合掌造りの建物で、昔からの技法がそのまま保存されています。
この五箇山民俗館の中は五箇山での暮らしについての情報や、昔から使われてきた道具などが約200点ほど展示されており、五箇山の人がどのように暮らしてきたのかが詳しくわかるようになっています。
さらに訪れて欲しいのは「塩硝の館」。かつて五箇山はこの塩硝作りに特化していた街です。塩硝とは黒色火薬の原料のことで、製造された塩硝はお殿様のお膝元である金沢へと届けられていたそうです。
「塩硝の館」では材料の集め方や作り方、出荷方法に至るまで様々な情報が展示されています。他では見ることができない貴重な資料ばかりですので、五箇山を訪れた際には是非足を運んでみてください。
五箇山のベストシーズン
様々な魅力が溢れる五箇山ですが、訪れたいベストシーズンは12月〜3月と冬になります。白川郷と同じように雪景色になる季節が一番美しい景色を望めるので、この時期に計画を立てておくといいでしょう。
雪が降り始めるのはだいたい12月ごろで、年末年始になると本格的に積雪を始めます。その後3月まではどんどん雪を深めて2m以上の積雪になることも。3月に入ると次第に降雪量が減りますが、ゴールデンウィーク頃までは残雪があるので服装には注意が必要です。
五箇山へのアクセス方法
五箇山へのアクセスは電車でも可能なのですが、集落内でも距離があるので車でのお出かけがおすすめです。ICに近い菅沼合掌造り集落へは五箇山ICから約1km。さらにその奥にある相倉合掌造り集落までは約15km有ります。
同じ五箇山ではありますが、二つの集落の間が約11kmとかなり離れていますので歩いて行くことはできません。どちらの集落も訪れたい場合は車かタクシーを利用しないといけないので、事前にスケジュールや移動手段を考えておきましょう。
住所 | 富山県南砺市菅沼855 |
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アクセス | (1)城端駅からバスで42分、バス停から徒歩で5分 (2)五箇山ICから車で3分 |
駐車場の有無 | 有り |
公式URL |
合掌造りの家を見に行こう
今回は日本の伝統的な建築技法である合掌造りについてご紹介しました。合掌造りとはどのような技法なのか、また岐阜県にある「白川郷」と富山県にある「五箇山」でこの合掌造りの建物を見ることができると分かったと思います。
どちらも世界文化遺産に認定されている非常に貴重な文化財。訪れた際には建物や風景を損なわないようにルールやマナーをしっかりと守って観光するようにしましょう。
世界遺産である「白川郷」と「五箇山」。どちらもどこか懐かしい、日本の昔ながらの雰囲気を味わえる貴重な場所ですので、次のお休みには足を伸ばして一度訪れてみてはいかがでしょうか?